一番早いブランディング活動の進め方
ブランディング地域のクライアント様のマーケティングに携わることが多い弊社でも、昨今はブランディング関連のご相談をいただくことが増えました。
ロゴなどのデザイン、CIコピー、はもちろんBtoB企業様ですとビジョンの考案まで。ブランディングといってもアウトプットは多岐にわたり、進め方も制作者によって様々です。
マーケティングからクリエイティブまで、広いコミュニケーションを企画する弊社だからこそ気づく要点、また手戻りの少ない進め方があります。
高松第二コミュニケーションデザイン室長
クリエイティブディレクター/西川文章
◆ブランディングの定義
ブランディングは“クオリティの高いアウトプットを生み出すもの”と捉えられがちです。
ゴールはそれで間違いないのですが、これからブランディングを始めるなら、もう1段階前にある重要なプロセスがあります。
それは「何を伝えるか」を分析・考察すること。アウトプットはその後の「どう伝えるか」にあたります。
その「何を」とは企業や商品の「強み」であるとボクは考えています。
競合と比較して優位なところ、自社でしか実現できない唯一に近いところ。そのブランドに気付き、期待感を高めるには必ず「強み」があり、伝える役割を持つアウトプットの中核になります。
これが顧客や社会に伝わることで新しい顧客を生み、売上に貢献していく、つまり収益化されるのが本来のゴールだと考えます。
そして、もう1点、重要なのが「マーケティング活動」であること。
ボクの解釈では、マーケティングとは顧客が考えることを捉え、自社の強みをマッチさせることです。
よって、「強み」を明確化させ表現するブランディング活動は、マーケティング活動に欠かせない重要なパーツであると考えます。
進め方の観点から言うと、ブランディング活動の入り口部分は、基本的なマーケティング考察から始めるのがよいとボクは考えています。
◆大きな節目は「コンセプト」の立案
2018年に経済産業省が「デザイン経営」という考え方をまとめました。デザイナー(直感を活かすデザイン思考を持つ人)を経営に参画させる、という新しい手法です。
ブランディングにも通じるフレームワークであり、その中にある「ダブルダイヤモンド」の考え方がとても分かりやすく、また実践に近いものだと感じました。
その考え方に倣い、地域企業様にブランディングの説明をさせていただく際、このようなフレームを作成しています。
ブランディング活動は左にあるリソースの確認から、右にあるアウトプットに向かう中で、大きく2つのプロセス(発散と収束)を踏みます。
冒頭の定義のところでご説明した「何を伝えるか」が一つ目の段階。二つ目の段階が「どう伝えるか」です。
1段階目の結論として「ブランド・コンセプト」が決まります。
マーケティングのフレームを活用してブランド(企業や商品)のリソース確認から、マーケットについてのリサーチを行い、分析・考察を経てコンセプトを導きます。
これで分かるように、的確なブランディングを行う最初の一歩目は、マーケティングにおける基本的な内部/外部の環境分析であり、かつ考察を減ることで一気通関したブランディングを行うことができるのです。
◆前半はマーケット分析&考察。基本は3C分析です。
「何を伝えるか」を考えるプロセスに必要な分析項目は
①顧客ニーズ
②競合環境
③自社の強み
の3つだけです。つまりマーケティングの基本である3C分析の項目がそのまま当てはまります。
この3つの項目、それぞれでリサーチ手法は多くありますが、ブランドを考察するのに必要な情報はそんなに多くは必要ありません。芯を射抜くコンセプト立案に必要なのは3項目ごとの主要な情報だけです。
わざわざリサーチ会社に依頼したりせずとも、普段のビジネス活動から得られている感覚で十分だと思います。
「分析」というと複雑で大変な作業のように感じられるかもしれませんが、本来の意味は「もれなくだぶりなく明確に書き出すこと」です。
3つの項目ごとに、普段感じていることを思い出しながら書き出していくと、必要な情報はほぼ網羅できるでしょう。そしてこの3つの項目ごとに振り返って、敢えて書き出してみることで、今まで意識していなかった発見があったりします。
◆コンセプトは飾らず「誰に」「何を」「どのように」が分かるように
3Cの情報がきっちり分析されていれば、そこからコンセプトを導くことができます。コンセプトという言葉は持っている意味が広く、掴みにくい。よくあるケースとして、コンセプトをキャッチコピーのように考えてしまうこと。間違ってはいませんが、ボクが考えるコンセプトの条件は「誰に」「何を」「どのように」提供するブランドなのかが書かれているということです。
古い商品を思い出しながら事例として挙げると、
【誰に】
普段の生活の中で気軽に音楽を楽しみたい人に、
【何を】
1,000曲がポケットに入るサイズの音楽プレーヤーを、
【どのように】
最新技術によりデジタルデータを格納し、再生できる仕組みで。
このコンセプトを広告表現にしたキャッチコピーが「1,000曲をポケットに」。
という感じです。
自社が、または自社の商品がどんなことを考えている人に、どんな価値を、自社が持つどんな優位性をもって提供されるかをまず整理しましょう。広告などに使われるキャッチコピーは、このコンセプト表現を端的に刺激的に伝えるものとして後で考えるものです。
ボクはプランナーという職種ですが、コピーライターでもあります。デザイナーは日々、販売のため、またブランド価値を高めるためのビジュアルを考えています。つまり、コンセプト以降のアウトプットが主なフィールドではありますが、みんな「何を伝えるか」を頭の中で考察しています。
こんな脳みそを持つ我々クリエーターの思考を辿り、オープンな議論をできるようにするのが、本記事に書いたマーケティングを応用したフレームです。単純で基本的、だからこそ外すことがない幹の部分を構築できる。最も早く、そして的確なブランディング活動は、こうして進めることができます。